販促の切札/リラックマ
人間ではないし、「キャスティング」という言葉はあてはまらないかも知れないが、しかし実写CMでゴクミや田中麗奈と「共演」しているのを見ると、もはやひとつの人格が生まれているようにさえ思えてくる。考えてみれば、キティやミッフィーに明確な性格付けはなされていない。単純に「可愛い」だけの造形である。たれぱんだもぐうたらなイメージはあるが、言葉を発するわけではない。それにひきかえリラックマはしゃべるのである。フキダシはつかないが、つぶやくように言葉を発する。しかもちゃんと敬語が使えるのだから知的レベルも高いのである。
とにかくリラックマ、今や販促のキャラクターに引っ張りだこである。ローソンはコラボ商品も出して「リラックマフェア」を全国展開しているし、伊藤園では商品のオマケの携帯ストラップに使われ、オカモトからは何とパッケージにリラックマがプリントされたコンドームが発売された。なにしろプリントして商品にくっつけるだけで売上が上がるのだから、数字が命の営業部門の人にとっては救世主である。日夜商品の付加価値を高めるべく知恵を絞っている開発部門の人からすれば、「俺の仕事って何なの?」と疑問を抱かせる存在かも知れないが。
リラックマのキャラクター使用の極めつけは、東京都西部を走る立川バスの「リラックマバス」であろう。車体の外側をリラックマでペイントしてあるのだが、それだけではない。車内のシートにもリラックマがだらりんとお昼寝しているのである。オレンジとキャラメル色のリラックマカラーの車内は、ファンならば胸がきゅううんと萌え音を発すること間違いなし。営業帰りのサラリーマンが偶然乗り合わせてしまったらそのミスマッチ感は悲劇であるが、仕事ですさんだ気持ちも少しは軽くなるかも知れない。
こういったキャラクターのキャスティング(?)には、おそらく人間の売れっ子タレントと同じくらいの契約料を払わねばならないだろう。しかし、リラックマはわがままを言わないし、失言してひんしゅくを買うこともないし、突然FAXを送りつけて妊娠したとか休業するとか言いだすこともない。これが実は大きい。「リスクがない」というメリットは、今や何ものにも代えがたい価値なのである。今後不況に入り、広告もいっそう厳しく投資効果が問われるようになると、人間のタレントよりもリラックマのような「安全な」キャラクターが重視されるのではないかと思う。
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